PTA(Parent-Teacher Association)は、学校と保護者が協力して子どもたちの教育環境を良くするために設立された組織です。
しかし、多くの保護者がPTA活動に対して負担を感じており、その存在意義や活動のあり方について疑問を持つ人も少なくありません。
そこでこの記事では、PTAがなくならない理由や、PTAをなくす方法、PTAを廃止した学校の事例、PTA廃止のデメリット、そしてPTAはなぜ存在しているのかについて解説します。
PTAに関する様々な課題や問題点を理解し、これからのPTA活動について考える一助となれば幸いです。
記事内容
- PTA設立の背景と存在意義
- PTA活動に対する負担とその原因
- アメリカの事例
- PTAを廃止した事例とその影響
- PTA廃止にデメリットはあるのか
- 活動を存続させる必要性
目次はクリックしてご覧下さい。
PTAがなくならない理由とは?
PTAはなぜ存在しているの?
日本のPTA(Parent-Teacher Association)設立は、アメリカの影響を強く受けています。
PTAは、学校と保護者が協力して子どもたちの教育環境を良くするために、戦後、設立されました。
アメリカが、文部省に指導したことが始まりです。
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- 日本のPTA設立の経緯に関する参考情報をご紹介します。
GHQ は、昭和21年(1946)秋(10月頃か)、文部省社会教育局にアメリカのPTA資料を提示し、日本におけるPTAの結成を指導した。これを受けて、昭和21年(1946)10月19日、文部省内に「父母と先生の会委員会」が設置された。「『父母と先生の会』の健全なる発達を促進する方法を研究審議し、その運営活動に必要なる参考資料を作成する」ことを目的と(委員会規約1条)に、父母、教育者、学識経験者及び文部省職員25人でもって組織された。また、文部省ではこの調査審議に並行して、関係者に対し、PTAの設置奨励を始めることになった。
引用元:公益社団法人日本PTA全国協議会
PTAがなくならない根本的な理由とは
PTAの活動は、、大変価値ある活動です。
ただ、多くの保護者がその負担を感じているのも事実でしょう。
様々な課題を長年にわたり抱えながら、なかなか改善されないのは、「みんながやっているから」という同調圧力があることや、活動の意義を再考する機会が少ないことが原因でしょう。
PTA役員の断り方
PTA役員を断るのは簡単ではありません。様々な攻防も展開されています。
そもそも保護者会に出席しない戦術は今もありますが、役員逃れをすることは許されないとして欠席裁判のように役員が決まるケースもあります。
PTA活動では、役員選出が最初の難関です。役員は「他に引き受ける人がいなかったから」やむをえず引き受けたというケースは少なくありません。
無理をして役員を引き受けた人にとって「例年通りの活動を無難にやり過ごすこと」で精いっぱいになるのも致し方ない事でしょう。なんとか役員を引き受けたものの、これ以上、負担になることを引き受けられない実情には、理解を示したいものです。
仮にPTAに課題や問題が生じていたとしても、改善や改革はもちろん、存続の意義を問うなどしようものなら、負担が増えるのは目に見えています。
ましてや多くの人が「よいことだ」「大切なことだ」としている活動に対して、自分が問題点を指摘したり、改革を言い出していしまうと、望まない批判を受けたり、大きな負担が増えることになりかねません。そのため役員としての1年か2年をやりすごせばいいと考えてしまうのもやむを得ないことでしょう。
PTAは強制加入ですか?
PTAへの加入は原則として任意であり、法的な強制力はありません。しかし、実際には強制的な雰囲気があり、断りづらい状況が生まれています。
同調圧力
強制加入ではないのに、実態は強制的と感じる理由には、同調圧力の存在があげられます。同調圧力とは、グループや団体などの内で、個人に対して心理的な圧力がかかる現象のことを指します。
この圧力により、個人は自分の意見や信念とは異なる行動をとることを強いられることがあるのです。同調圧力は、グループに受け入れられることを求める人間の基本的な欲求から生じると考えられています。
PTA退会者続出の背景にあるのは
PTA退会者が増えている背景には、複数の要因が考えられます。
PTA活動の負担や、運営や活動の内容への不満、さらに、現代の多様な家庭環境や働き方の変化も影響しています。
PTAを廃止・解散した学校の事例
東京都立川市立柏小学校では、保護者の98.7%の賛同でPTAを解散しました。新型コロナウイルスの影響で活動を見直し、保護者の意見を集めた結果です。
解散後は、学校と保護者が直接連携する形で活動が行われています。この事例からは、PTAの在り方について柔軟に考える必要性が示されています。
他にも次の事例があります。
長野県松本市の筑摩野中学校のPTAが解散を決定しました。加入率の低下と役員選びの難航が解散の主な理由です。加入率は昨年度の9割以上から今年度は8割程度に低下し、特に2年生は7割程度で、6割近い学級もありました。役員決めは数年前から難航しており、共働きなどを理由に断る保護者が相次いでいました。これらの理由から、PTAは解散と新たな有志団体の設立を決定しました。
引用元: 長野放送「PTAはもう限界? “9割以上賛同”中学校が「解散」決断 理由は「加入率低下」「難航する役員選び」」 (2023年3月27日)
これらの事例はあるものの、まだまだ限定的なものといえるかもしれません。
PTAがなくならない理由の根深さ
PTAをなくす方法とその影響
PTAをなくすためには、まず保護者や教職員など関係者の合意形成が必要でしょう。学校やPTAの規約に従って正式な手続きを踏み、退会や解散の決議を行うことが一般的です。
ただしこれらの諸手続きを担えるのは、現役員らが中心となることが考えられます。つまり現役員らの負担が増えるのです。
「任期中は無難にやり過ごして、できるだけ負担を増やしたくない」という役員が続く間は、こうした諸手続きが、なかなか実現することはないでしょう。
もちろん、PTAをなくすことによる影響は十分に考慮する必要があります。例えば、学校行事のサポートや子どもたちの安全対策など、PTAが担っていた役割をどのように代替するかが課題となります。また、保護者同士のコミュニケーションが希薄になる恐れもあるからです。
PTAをなくす方法には多数派の声が大切
PTAは、保護者と教師が協力して学校教育を支援する組織ですが、その存在について賛否両論があることは前述してきた通りです。
ネットではPTAの廃止を望む声が少なくありませんが、現実のPTA活動の場で「PTAをなくしたい」と積極的に表明している人は少数派でしょう。
「みんなも不満に思っている」と噂しているだけで事態が変わることは望めないかもしれません。実際にその声がどの程度あるのか、それを明確にしていけるかどうかは、重要なカギの一つです。
民主的に物事を解決しようとするなら、多数派であることを示すことが大切です。これが民主主義の原則、多数決の力です。根拠を数で示すことは大変重要なことでしょう。
PTAをなくすためのアプローチ
PTAをなくすためには、PTAを廃止したいという声が、PTA関係者の多数派であることを、現在の役員が十分に認識することが重要です。しかし、これを推進する役、まとめ役を引き受ける人がいないため、実態がわからない状況が続いています。
PTAをなくすには、PTAに関わる多数派の声を把握し、様々な課題を乗り越える必要があります。これは容易なことではありません。役員任せにせず、変化を望む保護者や教育関係者が協力し、積極的に声を上げることが求められます。
「やりすごしたい派」の存在
PTAの幹部、特に「会長」になる人は男性が多く、地元で知名度や権威のある議員や社長などが少なくありません。そういった方々には、多数派の意見を聞きつつ、少数派への配慮も欠かさず、公正に物事を判断する責任があります。
しかし、会長などの役員幹部に届く声が、PTA活動に積極的な人々の意見に限定されている場合、つまり潜在的な意見を把握できていない場合、PTAは結局のところ例年通りの活動を続けることになります。
また、役員には自ら進んで引き受けた人よりも、仕方なく引き受けた人が多いと言われています。このような状況では、本来なら改革が必要なのです。
ところが、現状の役員が「やり過ごす派」で、できるだけ負担を増やさずに任期を終えようとしていると、PTAは「例年通り」の活動を続けるだけで、本質的な問題は先送りされてしまいます。
ですから、この問題を役員だけの問題として任せきりにするのはおすすめできません。役員を引き受けただけで、すでに大きな負担がかかっているのです。役員任せにせず、みんなで協力する姿勢が大切でしょう。
PTA改革の難しさ
なかにはPTA改革を試みるキーパーソンがいるケースもあります。けれどその改革がうまくいくケースはまだまだ少ないでしょう。これは、日本全国いたるところにある風土「現状維持でやり過ごす」とういことが大きな原因となっていることが推測されます。
「前例踏襲」、つまりこれまでのやり方(前例)をそのとおりにやることは、責任の所在をあいまいにさせます。問題が生じたとしても「前からこうしていた」と言えば責任の所在がわからないままになるでしょう。
一方、改善や改革には責任が伴います。誰が改善や改革を推し進めようとしているかは、はっきり見えるものです。よい結果が出せるまではバッシングを受けるリスクもあります。「やり過ごしたい派」は存在し続けおり、そこからの同調圧力もかかります。
これはPTAに限ったことではありません。いじめにたとえるならこうなります。いじめは加害者に責任がありますが、傍観者にも本当は責任があるのです。傍観者は結局はいじめに加担したことと同じでしょう。傍観者の立場から一人でも多く脱却し、いじめをやめさせるための活動を自発的に行う。これがいじめを生まない社会をつくるのです。
こうした「やりすごす派」と「傍観者」は、日本の様々な場で多数派となり、新しい改革を妨げているのでしょう。
PTA廃止のデメリットとは?
PTAを廃止すると、学校行事の運営や児童の安全確保などに関わる保護者のサポートが減少する可能性があります。また、PTAを通じて行われていた保護者間のコミュニケーションが希薄になり、学校と家庭の連携が弱まることも懸念されます。
PTAが担っていた役割を他の組織や個人が引き継ぐ必要があり、その過程で新たな負担や課題が生じることも考えられます。
PTAを抜ける理由は何ですか?
保護者らがPTAを抜ける理由としては、PTA活動にかかる時間や負担が重いと感じることが挙げられます。また、PTAの運営や活動内容に対する不満や意見の相違がある場合もあります。現実問題として働き方や家庭環境の変化により、PTA活動への参加が難しくなることも理由として考えられます。このように、PTAを抜ける理由はさまざまであり、個々の保護者の状況によって異なります。
PTA存続や廃止について考えるなら
PTAの存続や廃止について考える際、まず重要なのは、その理由を明確にすることです。PTA活動の目的や意義を理解し、活動に対する不満や問題点を具体的に挙げることから始めましょう。
そしてPTAの存続や廃止について、関係者の考えをまとめることです。アンケートを実施することも有効です。肌で感じていることがあれば、それを明確に言語化し数量化することが求められます。
また活動の負担を軽減するために役割分担を明確にし、必要に応じて外部の支援を受けることも一つの方法です。また、保護者や教職員とのコミュニケーションを密にし、多様な意見やニーズを受け入れながら、柔軟に活動内容を見直すことも大切です。
PTAをなくすことによる影響を十分に検討し、学校や子どもたちへのサポート体制をどのように維持するかを考える必要があります。PTA解散の提案や議論を行うには、保護者や教職員とのコミュニケーションが欠かせません。十分な情報共有と合意形成を目指して、意見交換や協議を進めることが重要です。