「幸福の王子」という物語をご存知ですか?
オスカー・ワイルドのこの短編童話は、自己犠牲の美しさを描いた作品として長く愛されています。
でも、少し視点を変えてみると、この物語には、単なる「自己犠牲」ではなく、もっと重要な教訓が隠されているのではないでしょうか。
それは、「幸福の循環」という考え方です。
この視点から見ると、物語のメッセージがさらに深まるかもしれません。
幸福の王子が伝えたいこと「自己犠牲の美しさ」
あらすじ
まずは簡単にあらすじをおさらいしてみます。
幸福の王子は、町の高い柱の上に立つ黄金の像です。
王子の像は全体を薄い純金で覆われ、 目は二つの輝くサファイアで、 王子の剣のつかには大きな赤いルビーが光っていました。
引用元:青空文庫 「幸福の王子」
王子は、生前は豪華な宮殿で暮らし、悲しみを知らない生活を送っていました。
しかし、像となった今、貧しい人々の苦しみを目にし、自分の像にほどこされている宝石や金箔を分け与えることで、その苦しみから救おうとします。
旅の途中で訪れた小さなツバメが、王子の願いを聞き入れ、像として動けない王子の代わりに、目の宝石や、体を覆った金箔をはがし、苦しんでいる人に運んで、その使命を果たしていきます。
やがて、寒さの中でツバメは力尽き、王子も高価な宝石や黄金の輝きを失い、人々から見捨てられます。
しかし、最後には二人の献身が天国で称えられるという結末です。
従来の解釈:「自己犠牲」の美しさ
この物語は、多くの人にとって「自己犠牲の美しさ」を教えてくれる作品として知られています。
王子は自分の持つ宝石や黄金を惜しみなく手放し、ツバメも命を捧げる形で王子の願いを叶えました。
その姿は、純粋な無私の愛と他者への奉仕と象徴され、多くの人々に感動を与えています。
こうした解釈は間違いなく、この作品の重要なテーマです。
ただ、この視点だけで捉えると、私たちが学べる教訓は
「自分を犠牲にしてでも他者を助けなければならない」
というメッセージに留まってしまうかもしれません。
幸福の王子が伝えたいこと「幸福の循環」
新たな解釈「幸福に満ちているからこそ与えられる」
ここで、こんな視点を加えてみたいと思います。
「幸福の循環」という考えです。
この視点に立つと、「幸福の王子」は単なる自己犠牲の物語ではなく、「幸福を循環させる」物語としても読み解けるかもしれません。
「自分が幸せになるより、もっと幸せになるべき人がいる」そう思うのは、どうやら間違いかも。
「自分が幸せになれば、誰かを幸せにしてあげられる」このほうが、全方向的にプラスの循環が始まります。 pic.twitter.com/gpwEHN0ND3
— 山辺千賀子/やまべちかこ (@white7pearl) January 4, 2025
王子は、「自分の幸せよりも、貧しい人々を助けたい」と考えたのでしょうか。
もしかしたら、自分が既に十分幸せだから、迷いなく、困っている人々を幸せにしてあげたいと願い、また、幸せにすることができた、そう考える事ができるのではないでしょうか。
この視点は、従来の解釈である「自己犠牲」の枠を超えた視点と言えるかもしれません。
王子が知っていた「幸福の力」
王子は、生前、豪華な宮殿で物質的な幸福に満たされた生活を送っていました。
「私はサンスーシの宮殿に住んでいて、そこには悲しみが入り込むことはなかった。
引用元:青空文庫 「幸福の王子」
王子は、その生活を通じて既に十分「幸福がもたらす喜び」を知っていたのです。
そして、像となって人々の苦しみを目の当たりにしたとき、何のためらいもなく、自分が持っている幸福を分け与えることで彼らを救いたいと願ったのではないでしょうか。
幸福を知るからこそ分け与えられる力
もし王子が幸福を知らなかったとしたら、彼の行動は「自己犠牲」という悲壮感に支配されたものになっていたかもしれません。
しかし、王子は幸福を十分に経験し満たされていたからこそ、その力を活用し、分け与えることに迷いがなかったと考えられないでしょうか。
こう考えると、「幸福の王子」は、単なる自己犠牲の物語ではなく、「幸福の循環」を描いた物語としても解釈できると思うのです。
幸福の王子が伝えたいこと「現代に活かす」
自己犠牲ではなく、自己充実から始める
現代の私たちも、まず自分を満たすことが大切ではないでしょうか。
自己犠牲だけを美徳とするのではなく、心の余裕を持つことで、自然と他者に手を差し伸べる力が生まれるものです。
それが、幸福の循環を作り出す第一歩となります。
王子が、自分が持っている宝石や金箔という「幸福」を分け与えたように、私たちも、自分の持つ力を活かして、周囲に幸せを循環させる存在になれるのです。
まとめ:幸福の王子が伝えたいこと
「幸福の王子」は、自己犠牲の美しさを描いた感動的な物語です。
ただ、それだけでなく、「自ら幸福に満ちた人は、惜しみなく他者に与えられる」という教訓も読み取れるのではないでしょうか。
この解釈は決して「自分だけが幸せであればいい」という自己中心的な考え方を肯定するものではありません。
むしろ、自分を満たすことは、他者を思いやる力や行動を生み出すための大切な基盤となるものです。
王子の行動は、自身が幸福を知っているからこそ、それを分け与えることに迷いがなく、心から他者のために尽くすことができたという点に本質があります。
そして、その行為が最終的には自分自身にも精神的な喜びをもたらしているのでしょう。
現代の私たちも、自分の心と体を満たすことで、周囲にポジティブな循環を生み出すことができるはず。
それは単なる自己中心的な振る舞いではなく、他者と自分の幸福をつなぐ「幸福の循環」の始まりなのではないでしょうか。
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幸福の王子を青空文庫で
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