記事内容
- 「やる気のある無能」の特徴と具体例
- 「やる気のある無能」な部下や上司への指導と対処
- 自分が「やる気のある無能」の場合の対策
- 「やる気のある無能」「やる気の無い無能」の生き方と可能性
※ 本記事は、別のサイトで掲載していたものをリライトし再掲載しています。
「やる気のある無能」ゼークトの組織論は軍隊から
ゼークトの組織論は軍隊体験がベース
仕事の場などで使われる「やる気のある無能」という言葉。
これは、「やる気に溢れて一生懸命働くけれども、結果に結びつかず、むしろ迷惑な人物」のことを指して使われています。ですから、無能な人に対するストレートな批判というよりも、次のようなニュアンスが込められています。
「やる気のある無能」の由来は「ゼークトの組織論」です。ドイツの軍人であり政治家でもあったハンス・フォン・ゼークトが提唱したとされています。
この組織論では、軍隊の将校を、以下の特性で分けています。
つまり、将校は、2つの特徴で分類できると考えたのです。
③「やる気のある」×「無能」:今すぐ殺せ、銃殺刑に処せ
「やる気のある無能は今すぐ殺せ」過激な表現の理由
ゼークトの言葉、「やる気のある無能は、今すぐ殺せ、銃殺刑に処せ」という過激な表現は、なぜ生じたのでしょう。
ゼークトは軍人です。戦場では、一人の行動の過ちが、軍隊全体の命の危険につながります。
適切な判断もできないのに、全力で戦いに突っ走っていく兵隊が一人でもいれば、仲間全員の命を危険にさらすことになりますから、この考えに行きついたのでしょう。
過激な表現は、あくまで歴史的な文脈で使用されたものであり、今日の社会では不適切なものです。
それでもゼークトの示した考え方に説得力を感じるのは、実際の人間関係や組織運営を考える上で、大いにヒントになるからです。
【特徴】やる気のある無能
ゼークトの分類を、現代の仕事に当てはめて、詳しくみていきます。
現代に応用するための重要ポイントは次の通りです。
つまり能力を次の二つに分け、【㋐判断力】が無いことを「無能」としました。
【㋐判断力】
ものごとの認識や評価を、組織の目的に沿って正しく判断する能力
仕事の優先順位、人材の適材適所、タイミング、善悪、軽重、コンプライアンスなどを、組織の目的にそって、判断できるかどうか
【㋑スキル】
訓練や学習で得られる技能、業務遂行スキル
PCスキル・市場理解力・対人関係能力・商品知識・スケジュール管理・機材操作・情報収集力・文章作成力・語学力など、業務遂行上、必要なスキルがどの程度あるのか
【具体例】やる気のある無能
まずは、「やる気のある無能」と批判されてしまう具体例を、いくつか紹介します。
さらに、動機が不純な場合、こんなことも起きています。
これらの特徴を持つ人は、組織活動をする上で、他の人との摩擦や対立、ひいては組織全体の目的達成を妨げるなど、問題を引き起こすことがあります。
けれど、「やる気がある」という特性を、軽んじてしまうのは実にもったいない話です。この記事では、この「やる気」の重要性について、順を追って深掘りしていきます。
「やる気のある無能」を含む4つのタイプ分け
ゼークトの法則に基づいた4つのタイプを具体的に見ていきましょう。個人の能力と働き方を理解するのに役立ちます。
特にご注目いただきたいのは、次の「無能」タイプです。
③「やる気がある」×「無能」
④「やる気が無い」×「無能」
③と④に見える人の中に、新しい時代の先駆者がいる可能性が高いからです。
①「やる気のある」×「有能」とは
①「やる気のある」×「有能」=働き者で、判断能力がある
参謀タイプ・職場のエース・スモールビジネスの経営者・士業・専門職
判断力も行動力もあるため、自ら率先して仕事をこなす傾向にあります。そのため他の人に仕事を任せることが苦手なことも。
「有能」で「働き者」としての自分を存分に発揮することに生きがいを感じるので、組織の中では、自分より上位のリーダーの右腕として活躍することが向いています。
事業の創業者や、スモールビジネスの経営者、士業や専門職にも多く、その場合は、事業を拡大するよりも、クオリティを求める傾向があると言えるでしょう。誰もが認める「仕事ができる人」です。
②「やる気の無い」×「有能」とは
②「やる気の無い」×「有能」=怠け者だが、判断能力がある
リーダータイプ・経営者・管理職・組織のトップ
このタイプは、自分が率先して動くことよりも、「この業務は誰に誰に任せられるか」「誰が協力してくれるか」と考えることを得意とします。したがってまさにリーダータイプといえるでしょう。分担や連携などを考えて人を動かしていくので、その過程で後継者などの人材育成も可能で、影響力を広く長く及ぼすことが期待できます。
一人で働くよりも、組織の目的達成の指揮官となる事で、大きな成果を出すことができるでしょう。このタイプの経営者は、組織を一代で拡大していくことがあります。
ただし「やる気」が乏しすぎたり「やる気」を発揮できない理由があると、このタイプの「どうすれば効率的に成果を出せるか」という思考判断で、ちゃっかりして怠慢に見える働き方に終始することもあります。
③「やる気のある」×「無能」とは
③「やる気のある」×「無能」=働き者だが、判断能力は低い
組織活動の問題児になりやすい ⇒これからの社会の先駆者である可能性も
前述した通り、ゼークトの組織論では「銃殺刑に処せ、組織に有害」とされています。しかしこれは、あくまで「命がけの戦場」でのこと。
ただ現代社会でも、判断能力が無いのに情熱や行動力が旺盛だと、間違ったことをして組織に損害を与える恐れが高いことは否めません。
「よけいなことを勝手にする」ので、他の人が「その対応に手がかかる」ということが生じやすいのです。
職場にこのタイプがいる場合は「組織の目的遂行の妨げ」となる働きを勝手にしないよう、適切な教育や管理をし、報連相を徹底して求めていくことが大切です。
「やる気」は、適切な自己コントロールや、周囲からの指導、サポートがあれば、その「力」を存分に活かしていくことができるでしょう。
ただ注意したいのは、「無能」の評価は、あくまで「組織の目的遂行」に照らし合わせて行われます。そのため旺盛な「やる気」が、適切な時と場で大きく開花する可能性を秘めています。
④「やる気の無い」×「無能」とは
④「やる気の無い」×「無能」=怠け者で、判断能力も低い
ルーチンワークに適している ⇒これからの社会の先駆者である可能性も
職場での仕事は最小限にとどめており、自己改善に興味を示すことも少ないタイプで、新しいスキル習得にも消極的です。自分の意見を出すことも少なく、他人の意見に追随することが多いでしょう。
主体的に考え行動することをしない傾向は、裏を返せば「的確な指示の下できちんと働く」ことにつながるため、それを期待して組織が最も多く採用している人材ともいえます。
ただし「差し替えがきく」人材のため、低賃金労働や安定しない雇用形態になりやすいでしょう。
一般的に、派遣やパート、アルバイト、ルーチンワーク業務担当者に対しては「差し替えがきく」人材として採用することが多く、本来の能力ややる気が引き出せない恐れはあります。
特に、就職氷河期に社会人となった人の中には、運悪く、この評価を受ける環境に身を置かざるを得なかった人も少なくありません。
この評価を受ける人の中には「怠け者」の性分そのままの人もいますが、そうではないケースも増えています。例えば、仕事よりも、他に優先することがある人にこの傾向が見受けられます。
具体的には、育児や介護などに手がかかる人、家族や自分の時間を大切にしたい人などが該当します。また小説家や画家、役者やモデル、歌手を目指すなど、大きな夢を持っている人も、職場では、この「無能」な「怠け者」タイプに見られていることは少なくないでしょう。
このタイプも「やる気が無い」「無能」の評価は、あくまで「組織の目的遂行」に照らし合わせて行われます。そのため適切な時と場で大きく開花する可能性を秘めています。
「やる気のある無能」と「やる気の無い無能」の可能性
ここからは、「ゼークトの組織論」を基に、これからの働き方のヒントを模索していきます。
ゼークトは、軍人として、上級大将まで勤めた実力者です。ですから、ゼークトの組織論の次の二つの前提は、現代に置き換える必要があります。
「ゼークトの組織論」のバイアス
①環境「生きるか死ぬか、命がけの戦場」
②価値判断「組織の目的遂行のために、能力を発揮するかどうか」
記事では、これからの社会を考えるうえで、前提を下記の通りとして考えていきます。
これからの社会
①環境「共存共生を目指す社会」
②価値判断「他者を尊重しつつ、個々人が自分らしく生きがいを創出できるかどうか」
現代は、資本主義経済が行き詰まり、経済活動の在り方そのものの見直しに迫られています。
金銭に置き換えられる評価だけで、人や物事の価値をはかることに、矛盾と虚しさを覚え、私達は生きる意義や目的を見失いそうになっています。
そんな中で「やる気がある」という特性は、他の何ものにも代えがたい「力」を秘めていると言えるでしょう。
また「やる気の無い無能」も、あくまで「組織の目的遂行」に照らし合わせて評価されたものに過ぎません。「他者を尊重しつつ、個々人が自分らしい生きがいを創出できる社会」の一員としての可能性は、誰もが持っているものなのです。
一人ひとりのやる気や能力を活かせる社会とは、誰もが生きがいを持てる社会にほかなりません。現代社会の「経済第一主義」に疑問を感じる多くの人が、新しい社会の在り方を、今、手探りで模索しています。
特に、③「やる気のある」×「無能」や、④「やる気の無い」×「無能」と呼ばれる人の中には、その最前線で、現代社会と戦っている人がいるのではないでしょうか。
「やる気のある無能」と「やる気のない有能」の違い
「やる気のある無能」と「やる気のない有能」の違いは、主に彼らのパフォーマンスと自己認識にあります。
「やる気のある無能」は、自己評価が高く、行動的ですが、結果を出す能力が不足しています。
一方、「やる気のない有能」は、実力はあるものの、モチベーションが低く、その能力を十分に発揮していない状態です。
これらの違いを理解し、個々人のニーズに合わせたサポートを提供することが、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。
次は、「やる気のある無能」と言われる部下や上司への対応方法をご紹介します。
【部下と上司】やる気のある無能への対処
部下の場合は指導が大切
「やる気のある無能」な部下に対しては、適切な指導とサポートが必要です。まずは部下の強みを見つけ、それを活かせる業務に配置することが大切です。
また、具体的なフィードバックを通して、彼らの自己認識を高め、成長を促していきましょう。具体的な目標設定や、達成のためのステップを明確にすることも効果的です。
何よりも、コミュニケーションを密に取り、彼らが感じている不安や課題を共有し、一緒に解決策を探していくことが重要です。
本記事内の、見出し【「やる気のある無能」な自分への対策と生き方】もご参照ください。
上司の場合は対処に工夫
「やる気のある無能」な上司に対しては、プライドを逆なでするようなことは避け、あくまで立場を尊重していくほうが賢明です。あなたに人事権が無く、下剋上が成立する可能性も乏しいのであれば、上司には機嫌よく働いていてもらった方がよいと言えるでしょう。
立場が上の人は、自分を蔑ろにされたと感じると不満が募るものです。「やる気のある無能」な上司は、弁が立ち一目置かれていることは多いはずです。また、いわゆる職場のお局様や、職場のあるじのような立場となっていることもあります。
この上司が抱える仕事はブラックボックス化しやすいので、部下のこちらから積極的に情報を取りに行くことが大切です。その際、良好な人間関係を築いておくことが功を奏します。機嫌を損ねられると「やる気のある無能」な上司が、部下の仕事の大きな妨げになってしまう恐れがあります。
なお、組織の経営や運営の中核にこのタイプの人がいる場合、組織そのものの発展に限界があるので、その幹部の下で、あなたのライフプランが実現する見通しはどの程度なのか、シビアに考えたほうがよいでしょう。
「やる気のある無能」な自分への対策と生き方
「やる気のある無能」な自分を改善したいなら
先に示した通り、「組織の目的遂行」をよく考えて仕事を進めるようにしましょう。報告、連絡、相談、いわゆる報連相を何よりも大切にすることです。
他の人とのコミュニケーションの量を増やすことが、「やる気のある無能」から脱却する一番の近道です。
コミュニケーションの基本である報連相上手になるためには、失敗を恐れない事が大切です。どう伝えたらいいのだろう、今、報連相すべきなのか、と迷うなら、実践あるのみです。
報連相を的確に行えるようになるためには、まずは量的コミュニケーションを増やすことを心がけてください。相手が迷惑がった場合は「質の良い報連相を目指しています。どうぞご協力ください。ご指導ください」と上司や職場仲間にお願いしましょう。
「やる気のある有能」になるためには、まずは冷静に自己分析を行い、自分の強みと弱みを把握しましょう。周囲からのフィードバックを積極的に受け入れ、それを成長の糧として活用していくことがプラスになります。
目標を設定し、その達成に向けて計画的に行動することも大切です。失敗経験を積むことで、徐々に自分の能力を向上させることができます。計画には、スキルアップのための研修や勉強、実践経験の積み重ねなどを含めることもおすすめです。
また、コミュニケーション能力やチームワークを高めることは、有能な人材としての価値を高めます。何よりも、自分自身を信じて、前向きな姿勢を保ち続けることが、ポジティブな変化へと繋がります。
自分が「やる気のある無能」扱いにされて不満な場合
「無能」の評価は、あくまで「組織の目的遂行」に照らし合わせて行われます。そのため、あなたの持つ能力が、その組織では評価されていないだけという可能性は十分にあるでしょう。
その可能性が高いなら、これから進むべき道は二つです。一つは、あなたが率先して職場改革を行うこと。もう一つは自分の能力が正当に評価されるステージに、あなた自身が移ることです。それは起業や転職かもしれません。
どちらも望んでいないのであれば、今いる「組織の目的遂行」に対して、自分は、合致した言動が伴っていないことを謙虚に受け止め、改善に努めましょう。
派遣やアルバイトなどで働く場合、本人のやる気や能力を考慮せず、雇用契約が結ばれる事が多いものです。正社員の場合でも、やる気や能力を見せていれば、処遇はいずれ改善されるだろうという期待をかけても、なかなか思うようにいかないのが現実でしょう。
そうであるなら、自ら行動を起こすことが大切です。自分のやる気と能力を活かして、自分が求める処遇を求めて行動するのです。交渉や、起業、転職を視野に入れることが重要でしょう。
それを成功させるためには、自分のスキルを客観的に評価し、「いくらでも差し替えがきく」人材ではないことを証明できるようにすることを重視しましょう。職場で評価される、資格取得やスキル習得を目指すことが重要です。
「やる気のない無能」プライドが傷つく場合
前述した通り、「やる気のない無能」と言われるケースは、職場の仕事に対して「やる気」や「能力」を発揮できない人が多いでしょう。家族や自分の時間を大切にしたい人などが該当します。また病気やケガなど心身の不調が原因かもしれません。いずれは小説家やアーティストになりたいと夢を持った人かもしれません。
この場合は、自分の価値を仕事だけで証明しようと思わないことが大切です。金銭的評価だけで、人の価値がはかれないことを、自分自身がどこまで深く理解しているか、これが重要です。
あなたのやる気も能力も、環境やタイミングが合わないので、十分に発揮できないでいる、そのことを冷静に受け止めましょう。仕事の場で、自分を周囲に認めさせようと執着する必要は無いのです。認めさせようとすればするほどイラ立ちが募り、プライドの高い難しい人だと思われてしまうかもしれません。
よいプライドを保つためには、人の評価よりも、自分で自分の存在価値を認めることのほうが重要です。不都合な条件の中で、十分に頑張っている自分を、誰よりも自分が認めてあげましょう。
仕事は最終的には、成果を金銭的にはかりますので、仕事で「やる気」や「能力」を存分に発揮できないのなら、その現実はきちんと受け入れ、むしろ周囲への感謝や配慮を忘れないようにしたいものです。
「自分らしさ」と「生きがい」はこれからの社会の重要テーマ
金銭的評価だけで、人や物事の価値をはかる、組織の目的遂行の駒としての働き方。そんな環境の中に身を置いていると、いつのまにか私達は生きる意義や目的を見失いそうになっているのではないでしょうか。
経済的豊かさを目指す事を否定することはありませんが、これからはもっと多様な生き方を求めてよいはずです。
これからの社会
①環境「共存共生を目指す社会」
②価値判断「他者を尊重しつつ、個々人が自分らしく生きがいを創出できるかどうか」
この社会を実現するとは、存分に金銭的評価を得ようとする人も、質素な生活をする人も、ハンデのある人も、やる気と能力に溢れた人も、それぞれが「自分らしく」「生きがい」を持てる社会にするということです。
その社会を目指すためには、「自分らしさ」とは何か、深く掘り下げてみることが大切です。与えられた環境や持っている実力も「自分らしさ」の一つです。
経済的評価だけに傾き過ぎた価値を、「生きがい」や「自分らしさ」を重視して見直してみましょう。きっと新たな発見や感動が生まれる生き方につながっていくはずです。
また「自分らしさ」は、「自分以外の人」を知ることでしかわかりません。他者を尊重し、人との関わりの中で自分自身を見つめ直すことも重要です。仕事をはじめ、ボランティア活動や地域活動に参加するなど、社会への貢献や他者とのつながりを大切にすることは、一層「自分は何を求めているのか」を理解することになるでしょう。
自分自身の価値を高め、周囲との良好な関係を築くことは、「生きがい」や「自分らしさ」を発揮できる社会をつくる鍵なのです。
【まとめ】やる気のある無能
「やる気のある無能」という言葉は、一見否定的に聞こえるかもしれませんが、実はその中に秘められた可能性も大きいのです。
自分の行動や考え方を振り返り、適切な指導や対策を取り入れることで、誰もが「自分らしく」「生きがいを感じる生き方」を手に入れることができるでしょう。また、自己研鑽を重ねることで自己成長の手ごたえを感じることは、大きな幸福感へとつながっていくことでしょう。